CONNチュートリアル (20.b対応): Denoising

CONNでPreprocessingが終わった後、ノイズ除去を行います。
CONNでは2段階でノイズを除去します。第1段階は linear regression (線形回帰) で、第2段階は temporal band-pass filtering (時間バンドパスフィルタリング) です。

Denoisingの画面には様々な情報が記載されていますので、ひとつずつ見ていきます。

Linear regression

左上に”Linear regression of confounding effects”とあり、Confoundsとして、White Matter (5P), CSF (5P), realignment (12P), scrubbing (25P), Effect of rest (2P) とあります。このPは parameters の略のようです。

White Matter と CSF に関しては、CONNは aCompCor (anatomical component-based noise correction procedure) という手法を採用しています。aCompCorは、端的に言うと、WMであれば、WM領域のBOLD信号の平均時系列と、主成分分析をして最初の4つの時系列の合計5つの時系列を交絡変数として扱うということをしています。CSFも同様です。平均 + 4つの主成分で5つのパラメーターとなっています。realignmentは12となっていますが、これは、x, y, z方向の平行移動 + x, y, z軸まわりの回転 (pitch, roll, yaw) の6つのパラメーターと、この6つのパラメーターの1次微分の値となっています。1回微分すれば、変化量が大きいところが浮き彫りにされますよね。scrubbingは外れスキャンを交絡変数に使うというだけで、CONNの解説書を読む限りでは、25という数字に特別な意味はないと感じます。最後にsessionとtaskのコンディションを交絡変数として扱うとなっています。これらを最小二乗法を用いて調整しています。

Temporal band-pass filtering

Linear regressionの後に band-pass filteringが行われます。0.008Hz以下、もしくは0.09Hz以上の波は除去されます。rs-fMRI解析で関心のあるのは0.008-0.09Hzの間ぐらいに入るとてもゆっくりとした波です。なので、Linear regressionで頭の動きなどの影響を最小限にしつつ、関心のあるゆっくりとした波だけを取り出すことをしているわけです。デフォルトはLinear regressionの後にこのバンドパスフィルタリングをするという方法ですが、CONNのオプションにはsimultaneousという方法もありますので、Linear regressionとバンドパスフィルタリングを同時に行うという方法もあるようです。(メカニズムはよくわかりませんが)

Distribution of connectivity values (r)

これは、ノイズ除去の結果、BOLD信号の分布がこのように変わりますよというプレビュー表示です。ヒストグラムは、灰色がノイズ除去前、黄色がノイズ除去後を示します。より正規分布に近くなることがわかります。そして、その下にある散布図は、ボクセル間のconnectivityの様子を示しています。横軸がvoxel-to-voxel connectivity (r) となっていますので、あるボクセルと別のボクセルの時系列データがどれだけ相関しているのかということを意味します。そして、縦軸が voxel-to-voxel distance (mm) となっていますので、あるボクセルと別のボクセルがどれだけ離れているかということを意味します。これでわかるのは、ノイズ除去前は、ほとんどのボクセルで0.2-0.4程度の(疑)相関があるということです。これがノイズ除去をすることで、疑似相関が取り除かれ、本当に相関のあるところだけがきちんと残るようになってくるということです。

BOLD timeseries

ここでは、BOLD信号の時系列がノイズ除去でどのように変わるかが見て取れます。originalでは、その下のscrubbingでひっかかったところに合致して信号値が高くなっています。これはノイズであり、偽の相関が出てしまうことにつながるわけですが、after denoisingの後は信号が滑らかになっていることがわかります。GS originalは Global signalがどう変わるかで、これもまた波が平坦になっていることがわかるかと思います。

BOLD % variance explained by …

最後に、BOLD信号の変動がどのくらいそれぞれの共変量で説明されるかが脳の上にあわせて示されます。上図では、scrubbingによってどのくらい説明できるかというもので、scrubbingによって前頭葉の変動が一定の割合で説明できるということがわかります。
“scrubbing”のところをクリックすると他の交絡変数を選ぶことができますので、それぞれでどのくらい説明されるのか見てみるのも勉強になります。

QA plots

これらの結果をひとめで見るには、QA plotsを使うのが便利です。画面左下の QA olots をクリックします。

そして、Create new plot をクリックします。

QA denoising: distribution of functional connectivity values (FC) を選択し、Startを押します。

すると、もう一度QA plotsの画面に戻りますので、そこでQA denoising: distribution of functional connectivity values (FC) を選びます。

そうすると、上段に Subject 1のノイズ除去前、下段に Subject 1のノイズ除去後のヒストグラムが表示されますので、左で Select all をクリックして、19例全員のデータを表示してみましょう。そうすると、Denoisingによってばらつきが相当小さくなることがわかります。

これらを確認したら、先程のDenoisingの画面に戻って、左下の “Done” をクリックしてください。ここで、すべての項目にチェックが入っていることを確認して、Startをクリックします。(スクリーンショットでは私が分散処理をしているのでdistributed processingになっています)

そうすると、実際にノイズ除去をする計算がはじまり、本丸の connectivity の計算にうつっていきます。

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6 thoughts on “CONNチュートリアル (20.b対応): Denoising

  1. いつも先生のWebsiteで勉強している、CONNを利用している者です。
    ここのタグで、ROI-to-ROIのCONNのeffect value(=Z変換相関値)の算出方法なのですが、
    1) 行-列
    ではなくて、
    2) 列-行
      の算出方法(2)の計算)で、よろしかったでしょうか(-はマイナスの意味)。

    といいますのも、例えば、CONNに含まれているnetworks.とatlas.をそのまま採用した場合、resultsROI_Subject001_Condition001.matには、name2によると、
    列165、列166列および167には、
    ・’Grey Matter’
    ・’QC_timeseries_Dim1′
    ・’QC_timeseries_Dim2′
    が入っていまして、列165目以降は、それまでの「networks.とatlas.」の値とは異なっているからです。一方、行方向は、行164までの計算結果の為です。

    そして、これら三個(「’Grey Matter’」「’QC_timeseries_Dim1’」「’QC_timeseries_Dim2’」つの)値に関しては、その後の計算過程の報告事項として記録を残しておいた方が、よかったでしょうか。以上、よろしくお願い致します。

    • ご質問への回答ですが、引き算ではないんですね。これは、行の項目と列の項目の間の時系列相関の値を示しています。

      たとえば

      Z.names{1} が ‘atlas.FP r (Frontal Pole Right)’
      Z.names2{10} が ‘atlas.IFG tri l (Inferior Frontal Gyrus, pars triangularis Left)’

      の時、

      Z.Z(1,10) の値は私の手元のデータでは 0.3509 となりますが、これは atlas.FP r と atlas.IFG tri l の時系列相関の相関係数が0.3509というという意味になります。

      で、今の場合だと、本来はGrey Matter, QC_timeseries_Dim1,2 はROIから外した方がいいです。それの相関を見たいわけではないので。入っていても害はありませんが。
      それで、165列目の値は、Grey Matterとatlas, network の各領域の相関係数が入っています。
      同様に166列目の値は、QC_timeseries_Dim1とatlas, network の各領域の相関係数が入っています。それらは意味がないものになりますよね?

      これで伝わりますでしょうか?

      • 根本先生
        この度は、各ROIからROIへのZ説明御礼申し上げます。
        「’Grey Matter’」「’QC_timeseries_Dim1’」「’QC_timeseries_Dim2’」の事も理解しました。ご指導御礼申し上げます。

  2. 根本先生
    いつもご指導誠にありがとうございます

    基本的なことで申し訳ありませんが、質問させていただきます。
    CONNにおいて,結果を出すときに,
    SeedとTargetのROIを選択して,右下の部分から,plot effectsを選択するとconnectivity effectsの図が得られます。この図の縦軸はEffect sizeとなっています。
    SeedとTargetのROIを選択して,右下の部分から,plot valuesを選択すると横軸はsubjectでが,縦軸はなんでしょうか?このときに,MATLAB上にeffect valuesがsubject分でますが,縦軸はeffect valuesでしょうか?
    根本先生が講習会の時にZ値の出し方のコマンドをご指導してくださったので,Z値の相関行列をだして,SeedとTargetのROIを選択して,数値をだしてみると,MATLAB上にでたeffect valuesと同じでした。
    MATLAB上にでたeffect valuesとZ値は同じですか?
    すこし,混乱してしまって,CONNにおける,Effect size, Effect values, Z valueの関係についてご教授いただければ幸いです。
    お忙しいところ誠に申し訳ありませんが、何卒宜しくお願い致します。

    • effect size は文字通り「効果量」です。2nd levelの効果量を示しています。
      effect value と Z は同じで、connectivity の指標です。
      Zがどうやって求められているかというと、2つの領域の時系列相関の相関係数を r とすると、
      Z = r / tanh で規定されます。相関係数のFisher変換と言われています。

      • 根本先生
        お忙しいところ,早速のご返答ありがとうございます。
        整理ができました。ご指導誠にありがとうございます。

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