格安パルスオキシメーターは使えるのか?

久しぶりに脳画像以外のネタを。

COVID-19が猛威をふるう中、動脈血酸素飽和度 (SpO2) を測定できるパルスオキシメーターの需要が増えています。
万が一自宅療養になる時などにそなえてパルスオキシメーターが家にあるといいなと思いましたが、
一般的に購入できる1万円未満のパルスオキシメーターのレビューを見ると、みなさん、様々なことを書いていて、判断に困るなぁと思いました。

そこで、実際どうなのかと思い、自ら人柱になって、自腹で購入して実験してみました。

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レビー小体型認知症(DLB)の診断基準(2017年版)

このブログでは臨床的なことはあまり書かないのですが、先日、2017年版のレビー小体型認知症(DLB)の診断基準がNeurologyで公開されました。
読んでみて、とても勉強になる診断基準だなと感じましたので、自分なりに翻訳してみました。なお、現時点で正式な日本語版は公開されていません。あくまでも私が理解しやすいように、訳は逐語訳ではなく、若干意訳されています。(逐語訳って変な日本語になるのであんまり好きではないんです…)

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DLBの診断に必須なものは、認知症であることである。
すなわち、進行性の認知機能低下があり、そのために社会活動、職業、日常生活に支障が出ている。
初期には明らかな記憶障害や持続する記憶障害は認められないかもしれないが、病状の進行によって明らかになってくる。
注意、実行機能、視空間認知機能は特に障害されやすく、早期から起こる。

中核的な臨床兆候(最初の3つは初期に起こりやすく、その後も認められる)

  • 動揺性の認知機能:特に注意・集中力(or 覚醒状態?)が動揺しやすい
  • 繰り返し起こる幻視:典型的にははっきりとした形を呈しており、見えているものについて詳しく述べることができる
  • REM睡眠行動障害:認知機能低下の前に認められる
  • 1つ以上のパーキンソン症状:寡動、安静時振戦、固縮

支持的兆候

  • 抗精神病薬に対する過度な過敏性
  • 姿勢反射障害
  • 繰り返す転倒
  • 失神や一過性に応答が悪くなったエピソード
  • 重度な自律神経失調症状:便秘、起立性低血圧、尿失禁
  • 過眠
  • 嗅覚障害
  • 幻視以外の幻覚
  • 体系的な妄想
  • アパシー
  • 不安
  • うつ

DLBを示唆する(Indicative)バイオマーカー

  • SPECTやPET: 基底核でのドパミントランスポーターの取り込み低下
  • 123I-MIBG心筋シンチグラフィ: 取り込み低下
  • ポリソムノグラフィ: アトニー(筋弛緩)がないREM睡眠

DLBを支持(Supportive)する(DLBとして矛盾しない)バイオマーカー

  • CT/MRI: 側頭葉内側が相対的に保たれる
  • SPECT/PET: 後頭葉における血流低下や代謝低下
  • FDG-PET: cingulate island sign (CIS) (帯状回の一部が島状に保たれる)
  • EEG: 後頭葉で目立つ周期的にpre-alphaからtheta帯域で変動する徐波

Probable DLBは以下の条件(のどちらか)を満たす時に診断される

  1. 中核的な臨床症状が2つ以上あること。DLBを示唆するバイオマーカーはあってもなくてもよい。
  2. 中核的な臨床症状が1つあり、DLBを示唆するバイオマーカーが1つ以上ある。

Probable DLBはバイオマーカーだけで診断してはいけない。

Possible DLBは以下の条件(のどちらか)を満たすときに診断される

  1. 中核的な臨床症状が1つだけ認められ、DLBを示唆するバイオマーカーがない
  2. DLBを示唆するバイオマーカーが1つ以上あるが、中核的な臨床症状がない

以下の場合はDLBではない可能性がある

  1. 他の身体疾患や脳血管性疾患のような脳疾患があり、それらの病気で臨床像が部分的にもしくは全体的に説明できる場合。しかし、だからといってDLBの診断を除外できるわけではなく、混合型もしくは複数の病因が寄与していることを示唆しているのかもしれない。
  2. パーキンソン症状しか中核的な臨床症状として認められず、重度の認知症となってはじめて医療機関を受診となった場合。DLBは認知症症状がパーキンソン症状があらわれる前か同時にあらわれた場合にのみ診断できる。パーキンソン病に伴う認知症(Parkinson diseade dementia; PDD) は、パーキンソン病と診断されている患者が認知症になったときに使われる。臨床現場では、臨床症状にもっとも適した用語を使うべきであり、レビー小体病のような一般的な名称がしばしば役に立つ。研究でDLBとPDDを区別しなければならないとき、従来の1年ルール(認知症の発症とパーキンソン症状に1年以上の差がある)が推奨される。

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バイオマーカーがはっきりと列挙されており、同時に、「バイオマーカーだけで診断しないこと」とも明記されていることが印象的でした。ともすればバイオマーカーに偏りがちな中、臨床症状を丁寧に評価することの大切さを忘れないようにと釘をさしてくれているのだと思います。

症例報告の抄録のポイント

(結構この投稿へのアクセスが多いので、具体例を追記しました)

後輩に学会発表の指導をしていて思いついたことですが…。

症例報告をして、それを抄録にする際には起承転結として、以下のポイントをおさえておくといいかと思います。

  • 【起】冒頭に症例を一言でいうとこんな感じということを書く。
  • 【承】次に、症例の病歴(自分たちが関わるまで)を簡潔にまとめる。
  • 【転】自分たちが行ったことの要点を書く。
  • 【結】そこから学んだことをTake home messageとしてまとめる。

こうすると、抄録を読む人に伝わりやすいんじゃないかなと思いました。
実際の例は、以下のようになります。起承転結がわかりやすいように、明示しておきます。○や△は適当なので、全く関連はありません。

【起】○○と診断されていたが、臨床症状および検査所見から△△と××の
   合併が疑われた症例を経験した。
【承】症例は○歳女性。X-○年から抑うつ状態となり、次第に常に強い
   不安・焦燥感を訴え、精神科を受診した。○○と診断され、様々な
   抗うつ薬が投与されたがいずれも無効で、抗精神病薬も少量で副
   作用を呈した。このような状態が消長したため、当院に紹介と
   なった。
【転】入院時、強い焦燥感と認知機能低下を認めた。また、※※も認め
   た。画像検査では、□□を認めた。焦燥感を主体とする臨床症状、
   認知機能低下、および画像所見から△△と××の合併が最も考えら
   れた。薬物療法としては、▽▽が有効であり、修正型電気けいれ
   ん療法により精神症状と運動機能が更に改善した。
【結】○○や△△を認める症例では、××を鑑別に挙げることの重要性が
   示唆された。